
Vol.2 燃料の化学的・物理的性質-1
エンジンの作動原理は、燃料を微粒子にして気化させたものと、空気とを混ぜ合わせた「混合気」を、シリンダーの中へ導いて爆発・燃焼させ、その時発生した「圧力」でピストンを動かしてエンジン出力を得るものですが、その混合気へ火を点けて爆発させる方法として、ガソリンエンジンでは点火プラグを使用した「火花点火」、ディーゼルエンジンでは空気の圧縮熱による「圧縮着火」、模型用のグローエンジンではグロープラグ(熱源)の助けを借りた「グロー着火」などがあります。しかし、燃料の種類によっては火の点き易さの点で、「火花点火」や「圧縮着火」及び「グロー着火」方式に適した、あるいは適さない化学的・物理的性質が種々あります。ここでは各種燃料基材の物性値を<表1>に示し、その主要な性状について簡単に意味合いをご紹介致します。
![]() ガソリンエンジンの火花点火 |
![]() ディーゼルエンジンの圧縮着火 |
![]() 模型エンジンのグロー着火 |
[表1] 燃料基材の物性値
| 基 材 | メタノール | ニトロメタン | ガソリン | 軽 油 |
| 分子式 (炭素数) |
CH3OH | CH3NO2 | CnHm (C4~C11) |
CnHm (C11~C16) |
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分子量 |
32.04 | 61.04 | 約100(平均) | 約200(平均) |
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密度(20℃) <g/cm3> |
0.793 | 1.139 | 0.72~0.78 | 0.83~0.85 |
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沸点(760mmHg) <℃> |
64.65 | 101.2 | 17~220 | 180~360 |
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理論空燃比 <kg/kg> |
6.45 | 3.96 | 約15 | 約15 |
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発熱量 <kcal/kg> |
5,330 | 5,370 | 約 10,500 | 約10,200 |
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引火点 <℃> |
11 | 35 | 約 -40 | 約 70 |
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着火温度 <℃> |
470 | 418 | 約 260 | 約 230 |
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空気中燃焼範囲 <vol%> |
6.7~36 | 7.3~∞ | 1.4~7.6 | 0.6~7.5 |
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相溶性 水への溶解度 |
∞ ∞ |
10.5wt% 2.2wt% |
約290ppm 約 80ppm |
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| 蒸気密度(空気=1) | 1.11 | 2.11 | 3~4 |
◆密度(比重)
密度とは、難しく言えばその物質の体積と同じ量の水の重さに対する比率を示すものですが、簡単に考えれば、水より重いか軽いかをはかる目安であると言えます。そして、その密度は、各物質それぞれに固有の値が決まっており、メタノールであれば密度が水よりも小さくて 0.793(水の密度=1)、ニトロメタンは水よりも大きくて 1.139です。つまり、同じ1リットルの量であれば、水の重さは1000グラムですが、メタノールは793グラム、ニトロメタンは1139グラムになり、メタノールとニトロメタンでは同じ1リットルの量でありながら346グラムも重さが異なることになります。 従って、我々が使用する模型エンジン用の「グロー燃料」の密度は、メタノールやニトロメタンの混合割合に従って大きく変化することになります。例えば、同じ容量のグロー燃料の重さを比べた場合、ニトロメタン量の割合が多い燃料ほど重くなります。 |
![]() 物質の密度(比重) |
◆沸点
大気圧下での蒸発温度を示すもので燃料の揮発性(気化性)を示す目安になります。この温度が低いほど燃料の気化がしやすくなり、エンジンの始動性や低温での運転性が良くなります。ただし、この温度が常温よりも低くなると気化が激しくなり、火気のある場所では「非常に危険な燃料」となって、我々が趣味で使用する燃料としては適さなくなります。また、逆に沸点が高い燃料は気化性が悪くなり、エンジンで燃焼させにくくなります。
メタノールやニトロメタンは、純粋な化合物であるため(模型燃料用としては純度99.9%以上)固有の値を示しますが、ガソリンや軽油は、各種炭化水素の混合物(数千種類の混合物といわれている)であるために、ある一定幅の沸点範囲を持ちます。例えばガソリンの場合は、沸点範囲が17~220℃位になり、気化性が高い低沸点の留分から、気化性の低い高沸点の留分まで含まれた燃料といえます。このことからメタノールは、沸点が低過ぎず、高過ぎず模型エンジン用としては、安全性と気化性の両面から丁度良い燃料と言えます。
◆理論空燃比
空燃比とは、エンジンがシリンダーへ吸入した「空気」と「燃料」の重量比のことを言いますが、特に空気と燃料が化学的に過不足なく反応(完全燃焼)する空燃比のことを「理論空燃比」といいます。例えばエンジン調整の際に、燃料の割合を多くして、空燃比が理論空燃比よりも小さくなれば「リッチに(濃く)なった」と称し、逆に、燃料の割合を少なくして、空燃比が理論空燃比よりも大きければ「リーンに(薄く)なった」と言って、エンジン(キャブレター)の燃料調整の際の指針とします。 理論空燃比は、一般のガソリンでは14.7くらいになりますが、模型燃料に使用するメタノールでは6.45,ニトロメタンでは3.96となり、グローエンジンにおける燃料(空燃比)の調整は、ガソリンエンジンに比べて2倍以上リッチに(濃く)セットする必要があります。つまり、メタノールを主燃料に使用したグローエンジンでは、ガソリンエンジンの2倍以上の燃料を消費させないとエンジンがうまく作動してくれないことになります。 |
[理論空燃比] ![]() |
◆発熱量
発熱量とは、燃料を完全燃焼させたとき発生する「燃焼熱量」のことをいいますが、実際には、燃料が燃焼する際に水蒸気を発生するため、その「潜熱」分だけ小さい値を示します。模型燃料に使用するメタノールは、ガソリンと比べると燃焼した際に、ガソリンよりも水分を多く発生するため発熱量が小さくなり半分程度の値になります。 内燃機関であるエンジンでは、発熱量の高い燃料を多く燃やせば燃やすほど、大きなエンジン出力が得られる訳ですから、この点では発熱量が低いメタノールを燃料に使用した場合パワーが半分になって不利になります。
しかし、このことを前述の理論空燃比と合わせて考えると、メタノールは、例え発熱量がガソリンの半分であっても、空燃比の点からは、ガソリンの2倍以上の量をエンジンの中へ押し込むことが出来る(燃料を濃く出来る)訳ですから、エンジン出力はガソリンと同等かそれ以上のパワーが得られることになります。
[表2] 各燃料の発熱量 | |
| ガソリン | 約10,500kcal/kg |
| メタノール | 約5,330kcal/kg |
| ニトロメタン | 約5,370kcal/kg |
次回は、『燃料の化学的・物理的性質-2』と題して引火点・着火温度(発火点)・空気中燃焼範囲(爆発限界)・相溶性・蒸気密度などについて解説していく予定です。ご期待ください。
- Vol.1:エンジンの燃焼方式と燃料の種類
- Vol.2:燃料の化学的・物理的性質-1
- Vol.3:燃料の化学的・物理的性質-2
- Vol.4:グロー燃料の成分と各成分の働き-1
- Vol.5:グロー燃料の成分と各成分の働き-2
- Vol.6:市販グロー燃料の種類

















