Vol.1 エンジンの燃焼方式と燃料の種類    

最近のラジコン模型に使われるエンジンは、ジャンル別、競技別、サイズ別及びユーザーの使用レベル別などの細かなニーズに合せた多種多様な仕様のエンジンが作られています。そして、それぞれが非常に小型で軽量でありながら安定したパワーを安価に提供してくれており、我々ユーザーは大きな恩恵を受けています。



プロローグ

 最近のラジコン模型に使われるエンジンは、ジャンル別、競技別、サイズ別及びユーザーの使用レベル別などの細かなニーズに合せた多種多様な仕様のエンジンが作られています。そして、それぞれが非常に小型で軽量でありながら安定したパワーを安価に提供してくれており、我々ユーザーは大きな恩恵を受けています。また、エンジンの仕様や取り扱い方法については、エンジンメーカーやラジコン雑誌などの記事で詳細な説明がされており、ユーザーが使用方法に戸惑うことなくラジコンエンジン模型を楽しむことが出来るようになっています。

 それに対して、エンジンに必要不可欠な模型エンジン用燃料(以下グロー燃料と表記)は、用途やニトロメタン量を明記しているものの、仕様の違いを明確にした上で性能の違いを謳った商品は殆ど見当たらないのが実状かと思います。そのためか、多くのユーザーから「グロー燃料は分からない」あるいは、「グロー燃料には秘密が多い」とグロー燃料に対する「不信の声」を多く指摘されます。

 そこでこのコーナーでは、グロー燃料を設計・製造・販売するメーカーの立場から、グロー燃料の設計時に検討すべき事柄を紹介し、燃料処方に必要な考え方を示していきます。これにより、これからラジコンエンジン模型を始めようとするビギナーの方々から、既に何十年もラジコンエンジン模型を楽しまれているベテランユーザーの方々まで、それぞれの使用するエンジンや使い方に合ったグロー燃料の選択や、エンジンセッティングに少しでも役に立つ情報を提供したいと考えています。

 各種ラジコン模型の使用目的にあわせた、より具体的なグロー燃料の取扱い方法や、エンジン調整方法等の説明は、今後の企画で説明を予定しておりますのでご期待下さい。

Vol.1 エンジンの燃焼方式と燃料の種類

◆実車用のガソリンエンジンとディーゼルエンジンの燃料

 現在、私たちの周りを走る自動車には、音が静かで滑らかな走行をしてくれる快適性の高いガソリンエンジン車と、音は少々うるさいが非常に経済的で力強いディーゼルエンジン車があり、それぞれの用途に応じて乗用車やトラックなどに使い分けられています。そして、そのエンジンには燃料として、皆さんがよくご存じの「ガソリン」と「軽油」がそれぞれに使い分けられています。

 ガソリンエンジンの燃焼は、予め、キャブレター(気化器)で燃料と空気を混合し、シリンダーの中へ導いた「燃料と空気の混合気」へ「火花点火」させる方式のため、僅かな火花でも簡単に火が点き易い、「引火性の高いガソリン」が使用されています。

ガソリンエンジンの火花点火
ディーゼルエンジンの圧縮着火

 他方、ディーゼルエンジンの燃焼は、シリンダーの中へ導いた「空気」をピストンで高圧縮して5~600℃の高温度に過熱させ、その中へ燃料を噴射させる「圧縮着火」方式のため、比較的低い温度で「自然発火し易い軽油」が使用されています。

◆ラジコン模型用グローエンジンの燃料

 我々がラジコン模型用に使うエンジンは、非常に小型・軽量しかも安価でなければならないという制約から、実車用のガソリンエンジンやディーゼルエンジンに使われている、燃料の燃焼に必要な「火花点火装置」や「燃料噴射装置」及び摩擦部分の潤滑に必要な「潤滑油供給装置」等は使われておりません。そのため模型用エンジンには、簡単なエンジン構造でも容易に燃焼が可能となる燃料が求められます。

ガソリンエンジンの火花点火装置の例

実用ガソリンエンジンの潤滑油供給装置の例

 そこで、模型用のグローエンジンでは燃料に「メタノール」を使用し、メタノールの化学的な性質である <ガソリンや軽油よりも分子量が小さく、適度な揮発性と引火性及び着火性を持ち合わせていて簡単に燃焼させ易い> に着目して、ガソリンエンジンのごとくキャブレターで「メタノール」と「空気」を混合し、ディーゼルエンジンのごとくシリンダーの中へ導いた混合気を「ピストン圧縮」し、やや圧縮不足で温度上昇が足りない分を「グロープラグ」の熱源で補い、過熱したグロープラグのフィラメントで「自然着火」させ、爆発・燃焼させる方式になっています。

ディーゼルエンジンの燃料噴射装置の例

模型用グローエンジンの構造

 また、模型用のグローエンジンでは「潤滑油供給装置」が無い代わりとして、燃料の供給と同時にエンジン各部の潤滑をさせる目的で、「燃料」へ「潤滑油」が混合された「混合潤滑方式」となっております。実際のグロー燃料の構成は、主燃料の「メタノール」と潤滑剤の「オイル」及びメタノールの燃焼を促進させる目的で燃焼促進剤の「ニトロメタン」や、エンジン部品の錆や汚れの発生を防ぐ目的の「各種添加剤」が加えられています。

グロー燃料の構成

イラスト提供:RC WORLD 篠崎 均